デジタル治療アプリーDTx(デジタルセラピューティクス)とは

DTx(デジタルセラピューティクスとは)

 DTx(デジタルセラピューティクス)とは、エビデンスに基づき臨床研究されたソフトウェアを用いて患者に直接的な医療介入を行い、疾病の予防・診断・治療等を支援するデジタル治療アプリのことを指します。食事や運動を管理し、ダイエットや健康増進を図るというアプリなどは今までもありましたが、それらとDTxとの決定的な違いは「科学的根拠に基づく医学的効果が実証されており、尚且つ公的機関からの承認を得ている」ということです。

日本における承認プロセスは、まず 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構【通称:PMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)】による医学的効果の検証・審査のもと、薬事承認を得て、次に厚生労働省による保険適応の可能性についての評価を受けるという流れになっています。

DTxの定義

アメリカにおける定義

 DTA(Digital Therapeutics Alliance)というアメリカに本社を置くDTxを推進している非営利団体はDTxを以下のように定義しています。

 DTx(デジタルセラピューティクス)とは臨床研究などエビデンスによって裏付けられた、疾患を予防・管理・治療する高品質のソフトウェアプログラムです。単独で、あるいは薬物療法や機器療法などと組み合わせてベストな患者のケアを提供します。

 DTx製品はデザイン、臨床評価、ユーザビリティ、及びデータセキュリティに関した最適な先進技術を組み込んでいます。リスク、有効性、使用目的に関する製品表示を裏付けるため必要に応じて規制当局による審査、承認及び申請を受けます。

 DTxは高品質・安全・効果的なデータ主導の治療により、患者や臨床医や支払者が様々な症状に対処するのを支援するスマートで使いやすいツールです。

https://dtxalliance.org/wp-content/uploads/2021/01/DTA_DTx-Definition-and-Core-Principles.pdf

 また、DTAによるとDTxは以下の10の原則を守ることが必要とされます。

・疾患を予防、管理又は治療する。

・ソフトウェアによって駆動される。

・最適なデザイン・製造・品質である。

・製品開発及びユーザビリティテストにエンドユーザーを参加させる。

・患者のプライバシー及びセキュリティの保護を行う。

・最適な製品開発、管理、メンテナンスを行う。

・臨床的に意義のある試験結果を査読付き学術ジャーナルに公開する。

・リスク、有効性、使用目的に関する製品表示を裏付けるために必要な規制当局による審査を受け、承認または認証される。

・臨床評価や規制に応じた適切な表示をする。

・現実の証拠や製品の性能データを収集・分析・適用する。

https://dtxalliance.org/wp-content/uploads/2021/01/DTA_DTx-Definition-and-Core-Principles.pdf

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日本における定義

 日本においては日本デジタルセラピューティクス推進研究会(現 日本デジタルヘルス・アライアンス)が以下のようにDTx(デジタル治療)を定義しています。

 DTx は、ソフトウェアを主体としたもしくはソフトウェアとハードウェアを組み合わせた デジタル技術を用い、疾患の治療を行うために管理や医学的介入を行う。

https://www.garage.co.jp/documents/pr/ja/20210129_JP.pdf

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DTxの特徴

 従来の「健康管理アプリ」とは一線を画すDTxですが、どのような特徴を持っているかについて、⑴安全性・有効性⑵アクセシビリティの高さ⑶個人に最適化 という三つの観点から説明します。

安全性・有効性

 前述したように、DTxは科学的根拠に基づく医学的効果が実証されており、尚且つ公的機関からの承認を得ています。そのため、一般的な医療機関の診療・治療を受けることと大差ありません。

アクセシビリティの高さ

 DTxはスマートフォン、タブレットなどのデジタル端末を用いて各種疾患の診断・治療にあたるため、「いつ、いかなる場所でも」医療にアクセスすることができます。

個人に最適化

 DTxはデジタル端末を通して患者ごとのデータを蓄積することで、より患者にそった治療方法や管理、予防プログラムを提供することができます。

DTxサービス事例

 現在、DTxは米国を始めとして世界各地でサービスの展開が進んでいます。ここでは、米国と日本におけるDTxを一つずつご紹介します。

米国のDTx「Blue Star」

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引用元:https://twitter.com/welldoc/status/1176904729445773312

 2010年、米国の規制当局の承認を経てリリースされた「BlueStar」は、米Welldoc社が開発した2型糖尿病患者向けのDTxです。同サービスでは、患者が血糖値などをスマートフォンに入力すると、個々に応じたバランスの良い食事や適度な運動を促すような動機付けや教育を行います。実際にBlueStarを利用した場合、血糖値の高さと関連するHbA1c値を抑制できたとする結果が論文で報告されているといいます。

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日本のDTx「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」

引用元:https://sc.cureapp.com/d/

 2020年8月にPMDAによる薬事承認を得、同年12月に厚生労働省から保険適用の評価を得た「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」は、CureApp社が開発したニコチン依存症患者向けのDTxです。同サービスはAIプログラムを含む、行動変容を促すための4つの機能を備えており、これらの機能とCOチェッカーによる記録によって、禁煙治療をサポートしています。

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DTxの今後の成長可能性

 ここ数年で注目度が高まったDTxですが、今後、スマートフォンやウェアラブル端末などのスマートデバイス、それらに搭載されるアプリケーション、さらに5Gなどのインフラの高機能化が進むことで、病気の治療に役立つデジタル治療が益々一般的になると言われています。

2021年のDTxに関する世界市場規模は概ね34億ドル(USD)で、2026年までにCAGR(年平均成長率)31%以上を維持しながら131億ドルの市場に成長するという調査もあります。さらに、非対面の医療が注目されるwithコロナの今後においては、さらにそれが加速するといわれています。コロナの時代において、日本の医療分野のデジタル化の遅れが露呈されましたが、デジタル庁発足にはじまる日本政府のデジタル化推進の後押しを受け、DTxの分野はますます注目すべきものとなるでしょう。

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