米Empatica社が開発したEmbrace2は、てんかん患者の強直間代発作(けいれんを伴う発作)のモニタリング向けに現在広く使用されている手首装着型ウェアラブルデバイスです。患者のけいれん発作の可能性を検出し、介護者に即座に警告する機能を持ち、2018年にFDA認証を受けています。
同製品の機能
同製品は、汗の量のわずかな変化を計測することによって、ユーザーのてんかん発作を探知することができます。強直間代発作によって汗が出て伝導率が上がると、神経活動やストレスを反映する皮膚電位を探知します。
加速度計とジャイロスコープも内蔵されており、ユーザーが転倒あるいは急に動く可能性があるかを感知することが可能で、体温の長期的な変化を計測するための温度計も搭載されています。
てんかん予測の最適化
従来のてんかん治療の場合、てんかん患者が自宅で発作を起こした際にその経過を正確に追うことは不可能でした。Empaticaの共同創業者で最高経営責任者(CEO)であるマッテオ・ライ氏は「病院外での発作について、医師は患者の自己申告に頼るしかないのです」と述べています。
一方同製品を装着している間は、発作の他にユーザーの睡眠や活動レベル等が記録されます。神経科医はその記録を用いて発作の兆候やパターンを調べることができ、発作の予測精度が格段に上がったことで、システムの性能をさらに最適化することが可能となりました。
今後の展開
Empatica社はMITのスピンオフ企業であり、米マサチューセッツ州ボストンとイタリアのミラノにオフィスを構え、生理学的、行動バイオマーカーを駆使して患者モニタリングを提供するパイオニアです。
同製品はてんかんに留まらず睡眠、片頭痛、依存症、その他多くの病状の研究のために何千もの機関パートナー向けに販売されています。日本の多国籍情報ネットワークテクノロジー企業である日本電気株式会社(NEC)は、従業員のストレスレベルをモニターし、慢性ストレスを推定する研究に同製品を使用することを発表しています。
NECを始めとし、同製品が今後日本にいかに浸透していくか、期待したいところです。