DTxを開発してからローンチするまでのプロセス

 DTxを開発してから実際にサービスを市場に展開するまでどのような手順が踏まれているかご存じでしょうか。
この記事では、DTxを開発してから公的な手続きを経てローンチするまでのプロセスについて解説します。ぜひご覧ください。

開発から市場に出るまでの流れ

 まず、DTxを開発してからローンチするまでの大きな流れについて説明します。
下の図にある通り、DTxの開発を行った後、非臨床試験と臨床試験(治験)を経て厚生労働省に対して薬事承認の申請を行います。そして薬事承認の申請を行った後、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構【通称:PMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)】が医療機器の品質や有効性、安全性について審査します。PMDAによる審査が通ると、それを基に厚生労働省が薬事承認を行い、同時に医療機器が保険適用にあたるかどうかを判断した後、晴れてローンチすることができます。尚、薬事承認の申請を行う前にPMDAに相談をすることでより着実に、そして円滑に薬事承認を得ることができます。

『医療機器の薬事承認等について』(厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/zaitaku5.pdfを基に筆者作成

 次に、上記で説明した流れを「PMDAによる審査プロセス」と「厚生労働省による承認プロセス」に分けてより細かく説明します。

PMDAによる審査プロセス

 PMDAによる審査プロセスでは、申請された医療機器の品質、有効性、安全性について、科学的エビデンスに基づいた審査を行っています。またPMDAは審査の他、上記でも説明した薬事承認申請前の相談業務や、提出された申請資料の信頼妥当性について評価する「信頼性調査」、そして申請された医療機器を製造する能力を有するかどうかを調査する「GMP/QMS/GCTP調査」なども行っています。

 以下の図は、医薬品の審査の一例をフローチャートで示したもので、厚生労働省が発表した資料の中から一部抜粋したものです。

引用:https://www.pmda.go.jp/files/000161603.gif

 そして以下の図は、薬事承認申請の前にPMDAが実施する「薬事戦略相談事業」について図式化したもので、厚生労働省が発表した資料を一部抜粋したものです。

引用:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/zaitaku5.pdf
引用:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/zaitaku5.pdf

厚生労働省による承認プロセス

 厚生労働省が行っている承認プロセスは、⑴「PMDAの審査後、薬事承認を行うプロセス」と、⑵「保険適用の可能性について検討し、承認するプロセス」の2つがあります。それぞれについて詳しくみてみましょう。

PMDAの審査後、薬事承認を行うプロセス

 PMDAによる医療機器の品質や有効性、安全性を確かめる調査をはじめとして、信頼性調査や製造能力の調査といった厳正な審査が通ると、厚生労働省はPMDAが作成した資料を基に審議会の一つである薬事食品衛生審議会との問答を経て薬事承認をします。

保険適用の可能性について検討し、承認するプロセス

 厚生労働省から薬事承認及び販売許可が下りると、次は保険適用の可能性を検討する必要があります。具体的な審議プロセスとしては、まず厚生労働省宛てに「保険適用申請書」をA3/B2/B3/C1/C2/E2/E3/R区分で提出します。すると保険医療材料等専門機関で審議が行われ、特にA3/B2/E2区分では、当該通知を以て保険適用となります。
一方、B3/C1/C2/E3/R区分では、中央社会保険医療協議会(中医協)に報告され、そこで了承を得ることができれば晴れて保険適用となります。


 以下の図は、薬事承認を得てから保険適用をもらうまでの流れを描いたフローチャートで、厚生労働省の資料を一部抜粋したものです。

引用:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000772964.pdf

現状の課題と今後の流れ

 日本国内における現状の課題としては、米国や欧州などと比較してDTxの動きが遅いということが挙げられます。その背景には、DTxという存在自体が既存の医療機器の概念を覆すような異質性を持っており、既存の薬事承認プロセスや保険償還の仕組みでは適切な規制や本来の価値を十分に実施・評価することが難しいという点が挙げられます。

 一方で、2020年にはシミック株式会社とサスメド株式会社が業務提携を結び、DTxを開発してからローンチするまでの支援を開始するなど、国内でDTxを開発する環境が整い始めました。今後日本国内でDTxを推進していくためには、その流れに沿う形で政府がDTx開発に沿ったガイドラインや保険償還の仕組みを定め、開発からローンチするまでの承認プロセスを短縮するとともに、開発側の投資コストを明確化していくことが重要です


 超高齢化社会への道を辿り労働人口がますます減少していくと予想されている今後においてデジタルを活用した医療は必須であり、そのためにも日本国内全体でのDTx推進がより重要となるでしょう。


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