CBT搭載プログラムで過敏性腸症候群を治すDTx『Zemedy』

『Zemedy』とは

 『Zemedy』とは英Bold Health社が開発したDTxで、過敏性腸症候群(以下、IBS)患者を対象とし、IBS症状をセルフマネジメントできるようにするプログラムを実装しています。IBSの重症化を抑えるだけでなく、精神的不健康を是正し、身体及び精神全体のQOL(Quality of Life)向上をもたらしています。尚、同製品は消化器病学、栄養学、神経科学の科学チームらのノウハウを余すことなく詰め込んだ最新かつ実用的なIBSトラッキング&プログラムケアです。

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製品概要・特徴

 同製品は6週間にわたるプログラムによってIBS及びそれに伴う精神的な問題の改善を図ります。各患者の症状管理をはじめとして、各種教育コンテンツやバーチャルコーチの指導下でのエクササイズなどを24時間365日、時間場所問わず提供しています。
中でも大きな特徴として挙げられるのが、認知行動療法(以下、CBT)をデジタルアプリケーションに落とし込んだところです。CBTはIBSの重症化を防ぐ効果を持つとともに、IBS発症に付随する精神的不健康を改善する効果も持つといわれています。

引用元:https://www.zemedy.com/

では次に、IBSを抱える患者が実際にどのように製品を使用するかについて説明します。患者はまず、自身の腸内環境に関する情報(腹痛の有無や腸の膨張感など)をはじめ、その時の気分やストレスの有無などを日ごとに事細かく記入します。するとアルゴリズムは日々入力された患者のデータを基に、患者が物事をどのように捉えているか(認知)を分析し、行動に働きかけを行います。こうしてCBTに基づいた処方を行うことで各患者の認知と行動を変容し、IBS快方に向かわせています。

他にもIBSをはじめとする消化器系全般の疾患に関する知識を学ぶための教育コンテンツが充実しており、患者は自身の疾患理解を深めることができ、より適切な行動をとれるようになります。また、ストレスの軽減を目的として特別に設計されたエクササイズを提供しており、患者の精神的負担を減らすことも可能です。

医学的有効性の実証

 製品の医学的有効性については臨床試験によって実証されています。例えば『デジタルCBTアプリを介入した際のIBSの重症化リスクの評価に関する無作為化臨床試験』では、対照群(アプリを使用しない群)と比べて介入群(アプリを使用する群)では66%もの人々が消化器系症状の有意な改善が見られ、この改善は投与後3か月にわたって維持されました。また、IBSの発症に伴って感じていた破局感や不安症状、食物に対する恐怖などの精神的な問題の有意な減少が見られたといいます。さらに本研究は、参加者がアプリを使用すればするほど、QOLが向上(36%向上)し、抑うつ症状及びストレスも減少(28%)したことが報告されています。

医療機関におけるメリット

 同製品は患者個人だけでなく患者が所属する企業にも有意な影響を与えることが分かっています。現在、一般の社員の7人に1人がIBSに罹患しており、それに伴う医療費の支出や、従業員が欠勤することによる経済的損失が大きいことが分かっています。そのような状況下において同製品を導入すれば、企業が支払う医療費を削減することができ、さらには企業全体の生産性向上を図ることができます。さらに、企業は従業員ごとの疾患管理の報告内容を一括で管理することができ、それをカスタマイズしたレポートを作成することで自社に及ぼしかねない経済的損失をあらかじめ予測することができます。

Zemedyを導入すれば初年度に雇用者と支払者の支出を20%以上削減することができることを示唆しています。

今後の展開

 国際消化管疾患財団(IFFGD)の調査では、世界人口の10%から15%もの人々がIBDに苦しんでいるといい、米国における年間医療費請求額は140億ドルにものぼるといいます。今回紹介したサービス『Zemedy』の導入はこうした医療学及経済的損失を減らすことができると期待されており、実際にBold Health社は初年度における患者個人及び企業の支出を20%以上削減できることを示唆しています。

他にもZemedyのような胃腸疾患に対するソリューションは年々増加している傾向にあり、例えばイスラエルのDayTwo社は腸内細菌を分析して栄養と血糖値のコントロールを支援するサービスを展開し、シリーズBの資金調達で3100万ドルを調達しました。またAstrte社は、乳児に特化した腸内環境の会社で、現在新生児集中治療室(NICU)向けのツール群「NICUtrition」を構築しています。

このようにしてIBSに対する画期的なソリューションを提供している各社ですが、一方でBold Health社は炎症性腸疾患(IBD)や胃食道逆流症(GERD)、摂食障害などの疾患に対するデジタル治療も開発しています。消化器系疾患を中心に多様なサービスの展開を進めている同社の今後の展開に注目しましょう。


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