CureAppは、研究開発を進めるアルコール依存症治療アプリを用いた臨床試験を地方独立行政法人 岡山市立総合医療センター 岡山市立市民病院で実施することを発表しました。
飲酒は世界の疾病負荷の原因第9位で、国内のアルコール依存症患者は約107万人いると推定されています。アルコールの有害な使用は本人の健康を損なうだけでなく、労働生産性の低下や自動車事故、犯罪の増加、家庭内暴力など社会的にも多大な悪影響を与えます。
アルコール依存症への対策として、国内では2013年にアルコール問題の発生・進行・再発の予防のための計画策定と実施を定めた「アルコール健康障害対策基本法」が制定され、SDGsにも、アルコールの有害な摂取の防止・治療強化が含まれています。このように国内外で対策の必要性が注目されているにも関わらず、アルコール依存症に対して有効とされる認知行動療法や薬物療法などの専門的治療を受けている患者は国内では約5万人に過ぎず、100万人以上が未治療であると推定されています。
この治療ギャップの原因として、専門の医療機関が少ないことに加えて、患者が専門医療機関の受診に気後れすることが挙げられています。またアルコールによる身体疾患で内科に入院を要した患者でさえ、アルコール依存症専門治療を受ける方はごく一部にとどまっています。そのごく一部の患者においても、内科入院後、依存症治療を受けるまでに平均で33ヶ月かかっているという調査結果も報告されています。
近年、新しい治療法として注目される治療用アプリを用いて一般内科でアルコール依存症治療ができれば、これらの課題を解決できる可能性があります。すでに、米国では薬物使用障害向け治療用アプリがFDA(アメリカ食品医薬品局)からの薬事承認を取得し、日本でも同社が開発したニコチン依存症向け治療用アプリが2020年に国内初の治療用アプリとして薬事承認・保険適用されるなど、治療用アプリを用いた依存症の治療が実用化されています。
そこで、以前より「岡山アルコール依存症早期支援ネットワーク」においてアルコール依存症の早期支援に取り組んでいた岡山市立市民病院と共同で、アルコール依存症患者に対する治療用アプリの有効性・安全性を検討するための臨床試験が実施されます。