Vicore社開発のIPF患者向けDTx『Almee』が臨床試験を開始

2022年4月末、スウェーデンの製薬会社であるVicore Pharma社が、特発性肺線維症(IPF)患者の不安解消を目的としたDTxの臨床試験を開始しました。

突発性肺線維症(IPF)とは

引用元:https://ipf.jp/ipf/about/

 突発性肺線維症(以下、IPF)とは、肺胞の壁である間質が厚くなり、咳や呼吸障害をきたす病気です。なんらかの原因によって肺胞に傷がついた場合、通常であればすぐに修復されますが、長期的にわたって何度も傷がついてしまうとその傷を治すためのコラーゲン線維が大量に放出されます。そしてそれらが酸素や二酸化炭素の通り道である肺胞の壁(間質)に蓄積されると、間質は厚く、そして硬くなる線維化が起こってしまいます。間質に線維化が起こってしまうと肺が十分に膨らまなくなるため、酸素が不足してしまい呼吸困難や咳を起因します。現在、IPFに対する根本的な治療法は確立されておらず、IPF患者の平均余命は3~5年とされています。

臨床試験について

 Vicore社がAlex Therapeutics社と共同で開発したIPF患者向けのDTxは、認知行動療法に基づいてIPF患者の不安を取り除くことを目的としています。Vicore社はAlex社と提携する際、約100万ドルの契約一時金とマイルストーン、及び販売後のロイヤリティと引き換えにこの治療法の全権利を保有することとなりました。そして今年の後半に開始予定となっている主要フェーズに先立ち、最初の臨床試験が開始されました。この試験では、IPF患者が遠隔から参加できる分散型臨床試験(DCT)モデルが採用されています。Almeeは、IPF患者の不安を軽減し、QOLを向上させるために、医療専門家との日常的な診察と並行してCBTを提供するように設計されています。

今後の展開

 Vicore社によると2023年前半には臨床試験の結果が得られる見込みとなっており、臨床試験を経て医学的効果を実証することができた暁にはFDAに医療機器として申請を行い、2024年に患者への提供を目指しています。この承認が進めばVicore社のIPF治療薬候補と並んでIPF患者に対する差別化された治療法の一部を構成することができます。今後、数年以内にIPF患者の不安を取り除くようなDTx製品がローンチされるのか、今後の動向に注目しましょう。


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