片頭痛を治すDTx『Nerivio』

『Nerivio』とは

 イスラエルのTheranica Bio-Electronics社が開発したNerivioは12歳以上の片頭痛患者を対象とした遠隔電気神経調節(REN)刺激装置で、FDAから医療機器としての認証を受けています。同製品はウェアラブルデバイスとして、スマートフォン上のアプリと連携し片頭痛発生時に電気刺激を送ることで片頭痛の緩和及び消滅を可能としています

引用元:https://www.jpost.com/health-science/israeli-device-could-zap-migraine-pain-away-new-study-672708

従来の片頭痛への対処方法

 発作時にひどい頭痛を引き起こし、場合によっては吐き気を催す片頭痛ですが、それに対する従来の対処方法としては、安静もしくは投薬による痛みの緩和が挙げられます。しかし片頭痛の痛みを抑えようと過剰に服薬することで発生する『薬物乱用頭痛』と呼ばれるものがあるように、頭痛を抑えようとして服薬する際には注意が必要です。

その点、薬を必要とせずアプリケーション及びウェアラブルデバイスのみで完結しているNerivioは画期的ともいえます。同製品は頭痛薬を使用せずとも頭痛に対処することができるのです。

Nerivioの仕組み

 Nerivioは条件付き疼痛変調【CPM: Conditioned Pain Modulation】と呼ばれる疼痛抑制メカニズムを利用しています。このメカニズムはある一定の条件で発動し、脳幹の特定の神経伝達物質を大量に放出することで痛みを遮断するというものです。Nerivioはこのメカニズムを有効活用しており、患者が痛みを感じない程度の電気刺激を送ることでCPMの発動を誘発し、頭痛を抑制しています。

具体的な使用方法

引用元:https://youtu.be/7d5IkKxT9M4

 片頭痛が始まったらまず初めに上腕部にNerivioを装着します。その後約45分間にわたって痛くない程度の「ピリピリ感」が上腕部に電気刺激として送られます。アプリに表示されるガイダンスに従って強弱を変化させ、上腕部に通っている神経を電気刺激することで頭痛を緩和することができます。

Nerivioの優位性

薬物を使用しない治療

 Nerivioは前述したように薬物を使用せずとも頭痛の緩和及び消滅を可能としています。微弱電流によって上腕の末梢神経を刺激し、CPMを誘発することで痛みを抑制する遠隔電気神経変調(REN)処方のウェアラブル製品です。

医学的効果

 Nerivioは、FDAから医療機器として承認されており、医学的エビデンスに基づく医学的効果が実証されています。実際に同製品を使用したランダム化比較試験(RCT)を行ったところ、片頭痛患者の10人中7人が大幅な痛みの軽減を実感し、10人中4人が痛みからの解放を実感したということが報告されています。

個々の患者への最適化

 従来の片頭痛薬は多くの人を服薬対象として製薬しているため、人によって合う・合わないが出てくる可能性があります。一方Nerivioでは、電気刺激の強弱やそれによる痛みの緩和、消失の結果などのすべてがアプリ上に自動的に記録されるため、個々の患者への最適化が可能となっています。

今後の展開

 Nerivioは2019年度、『THE BEST OF INVENTIONS』という米TIME誌が厳選する年間の画期的な発明品Best100に表彰されています。一方日本でも、大手電機機器メーカーのオムロン株式会社が設立したオムロンベンチャー株式会社が、同社の遠隔神経調節技術を支援するため、3500万ドルのシリーズB資金調達ラウンドに参加しています。

片頭痛への有効な治療法が薬物療法に限られていた中、電気刺激を与えることで片頭痛の治療を可能にしているNerivioが世界及び日本で注目されています。今後のTheranica Bio-Electronics社の動向に注目しましょう。


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