AI指導で慢性閉塞性肺疾患を治療する『Kaia COPD』

DTx製品『Kaia COPD』とは

 Kaia Health社が提供している『Kaia COPD』は、18歳以上のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者向けのDTx製品で、欧州でクラスⅠ医療機器としてCEマーク*が付与されています。2019年にイタリアの製薬会社Chiesiグループと提携し、欧州で商品化しました。

*CEマーク…欧州医療機器規則(MDR)の安全性及び性能に関する一般要求事項(GSPR)を満たしていることを医療機器製造業者が主張するためのもの。

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製品の概要と特徴

引用元:https://www.researchgate.net/figure/screenshots-of-the-Kaia-COPD-app_fig1_329149484

 同製品は肺疾患に有効な治療法として知られる「肺リハビリテーション」の一環として、医師と理学療法士が作成したエクササイズや呼吸法、そしてストレスを軽減するためのリラクゼーションを提供しています。

他にもCOPDに関する豊富なコンテンツや症状発生時の対処法、そして症状管理機能と服薬リマインダー機能を備えており、疑問や困りごとが生じた際には、アプリを通じてコーチに連絡することもでき、呼吸法や咳の仕方、栄養などに関する質問をすることができます。

Kaia COPDの優位性

実装されているAI技術

 同製品の大きな特徴であり優位性を発揮しているのが実装されているAI技術です。まず画像認識技術を駆使してユーザーの動きをリアルタイムで解析し、トレーニング中の運動パフォーマンスを評価することで、安全に運動できる体制を整えています。さらに、個人の疾患プロファイルや日々のエクササイズを基に各ユーザーにパーソナライズされたプログラムを提供することが可能となっています。

身体及び精神的要因に対するアプローチ

 同製品は、心肺機能を鍛えるエクササイズを動画で提供しているだけでなく、不安やうつに対処するための音声によるリラクゼーションも提供しており、身体的要因だけでなく心理的要因にもアプローチしています

今後の展開

 NHS(イギリス国民保健サービス)によると、イングランドの5人に1人が呼吸器疾患に罹患しており、死因の第3位となっているといいます。そのような状況下でありながら肺リハビリテーションは、COPD患者の13%にしか提供されていません。またCOPDは、欧州の医療制度にとって莫大なコストとなっており、BLF(英国肺財団)の推計によると、英国における肺疾患により、NHSと患者は毎年約99億ポンドの負担を強いられています。

そうした状況に対して、各患者が自宅で気軽に行うことができ、かつ安価で効果的な治療方法を提供するKaia COPDは、COPD治療へのアクセスを世界的に民主化できることを示しています。
現在このアプリは、一部の保険会社やプロバイダーを通じてのみ利用可能となっており、ドイツ語でのみ展開されています。近い将来、英語や他の言語にも翻訳される予定とのことで、ますます今後の展開に注目が集まるところです。


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