近年、スマートウォッチを始めとしたウェアラブルデバイスを用いたデジタル医療の領域が注目されてきています。本記事ではウェアラブルデバイスを活用した医療の現状について解説していきます。
ウェアラブルデバイスとは
そもそもウェアラブルデバイスとは、手首や腕、頭などに装着するコンピューターデバイスのことを指します。代表的な例として、腕時計のように手首に装着するスマートウォッチ、あるいはメガネのように装着するスマートグラス等が挙げられます。
CPUやメモリの小型化が進んだことで、新たなコンピューターデバイスとして多くのメーカーにより開発が進められています。
パソコンやスマートフォンのように「持ち運ぶ」ことで利用するのではなく、「身に着ける」ことで本人が意識せずとも利用することができるのが特徴となっています。
ウェアラブルデバイスの技術発展により、SNSとしての用途を超え、運動の記録、心拍や睡眠時間の補足といった健康を管理する機能が充実してきました。
その結果活動量や睡眠といった生活情報、痛みやかゆみといった主観的な症状、精神状態など、従来定量化が難しかった項目や測定が困難であった多様な項目についても定量的な測定が可能になりつつあり、海外を中心にウェアラブルデバイスの有用性が大きく認識されてきています。
主な対象疾患
ウェアラブルデバイスを用いた臨床試験が既にいくつか行われており、その対象疾患としては以下のものが挙げられます。最も多く実施されていた疾患はパーキンソン病及び心不全、続いて二型糖尿病や慢性閉塞性肺疾患といった慢性疾患、さらに認知障害、双極性障害といった精神疾患での活用が積極的になされていることが分かります。
具体的なDTx製品
Apple Watchを始めとしたウェアラブルデバイスを活用したDTx製品は、既に開発され公的機関から承認を得ているものもいくつかあります。具体的にどういったサービスが開発されているか、見てみましょう。
Nightware
NightwareはApple Watchを用いてPTSD(心的外傷後ストレス障害)を原因とする悪夢障害や悪夢に関連する睡眠障害の治療をサポートするアプリです。睡眠中に着用したApple Watchが、着用者の心拍数や体の動きを解析します。独自のアルゴリズムで着用者が悪夢を見ていると判断した場合、Apple Watch自体が振動し、悪夢から脱却させることが可能です。
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Nervio
Nervioは片頭痛患者を対象とした遠隔電気神経調節刺激装置です。上腕部に装着したウェアラブルデバイスがスマートフォン上のアプリと連携し、片頭痛発生時に電気刺激を与えることで片頭痛の緩和、消滅を可能としています。
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BiovitalsHF
BiovitalsHFは心不全の投薬管理を目的としたシステムです。装着したウェアラブルデバイスが患者の心拍数、呼吸数、ストローク数などのデータを収集し、自動で投与量を効率的に調節します。
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今後の展開
ウェアラブルデバイスとして代表的で最も活用されているApple Watchは現在、活動量、歩数、睡眠、心拍数、血中酸素飽和度、最大酸素摂取量、心電図など、多様な生体データの測定が可能となっています。特に心電図は、令和2年9月4日、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)より「家庭用心電計プログラム」及び「家庭用心拍数モニタプログラム」として医療機器製造販売の承認を受け、日本国内での利用が開始されています。
ウェアラブルデバイスは日常の体調記録を本人だけではなく医療従事者による健康管理に活用できることに加え、医師が患者の健康状態を把握し生活指導や治療介入を判断するための補助ツールとしての活用も期待されています。
また、災害時や感染症のパンデミックなどで通院が制限され処方管理が難しい状況でも、ウェアラブルデバイスを活用した健康状態の把握により、慢性疾患や精神疾患の重症化を防止する取り組みも可能となります。今後はコロナ禍を契機に、ウェアラブルデバイスによる健康管理と病気予防の関心がますます高まっていくでしょう。