手術前後の体調を整え、合併症を予防する『myOp』

『myOp』とは

 『myOp』は、サウサンプトン大学病院の外科専門家の協力のもとmy mhealth社が開発したアプリで、外科的手術前後の体調を整え、特に手術後の合併症を予防することを目的とした各種プログラムを提供しています。

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製品概要及び特徴

 同製品は、外科的手術を控える患者が手術前後の体調を整え、かつ手術後の合併症を予防するための各種プログラムを提供しています。現在、手術患者の約30%もの人々が術後に何等かの合併症を経験しており、入院期間の長期化、及びそれに伴う医療費の増大などが問題となっています。同製品は患者の術後体調を整え、合併症を最大50%軽減することができることから、こうした問題を解決する一助になります。
また、同製品にはスクリーニングツールが実装されており、臨床医は合併症のリスクが高い患者を迅速にリスク層別化し、特定することができます。スクリーニングの対象となった患者には、手厚いサポートを受けることができます。

「プレリハビリテーションのNEWモデル」

引用元: https://mymhealth.com/myop

 同製品は、「Body, Mind, Nutrition」という三つの観点に基づいた新しいプレリハビリテーションを提供しています。そもそもプレリハビリゼーションとは、術前に行うリハビリのことを指しますが、その目的としては外科的手術を受ける前にあらかじめ体力を向上させておくといったものがあります。通常のリハビリテーションは、手術後に行うことが多いのですが、侵襲性の高い手術を受けたあとには長い間安静にする必要があり、リハビリテーションを再開するのが遅くなることが多々あります。
そこで、術前においてリハビリテーションを行いあらかじめ体力をつけておくというのがこの“プレリハビリテーション”という概念です。実際に、術前の身体のコンディションが良いほど、術後の経過もよくなるという研究成果も報告されています。

それでは、Body、Mind、Nutritionの3つの観点に基づいた新しいプレリハビリテーションについて説明します。

Body

 各患者にあったレベルでのプログラムを提供しており、体力を向上させることを目的としたプログラムをはじめ、自己排痰法(ACBT: Active Cycle of Breathing Technic)と呼ばれるトレーニングや禁煙のアドバイス、アルコールに関する問題への対処、その他症状に合わせた自己管理ツールなどが実装されています。

Mind

 マインドフルネスに基づいた認知療法(MBCT)コースを患者ごとにカスタムし提供しており、患者が抱える精神的な悩みの解決をサポートするような教育コンテンツをはじめ、手術前後におけるメンタルケアを行います。

Nutrition

 NHSの「Eat Well Guide」に基づいた食生活ガイダンスをはじめ、各患者に最適化されたレシピの提示や目標設定など、患者が手術に向けて健康的な食生活を送れるようなサポートを行います。

 以上が三つの観点に基づいた新しいプレリハビリテーションとなりますが、画期的な面は体力面のサポートだけでなく精神面や栄養面でのサポートまでも補完しているという点です。これらのプレリハビリテーションを行うことで手術前における体力を向上させるととともに、不安やストレスを軽減することができ、安心して手術に向かうことができます。その結果、合併症を患ったり、入院期間を延長したりすることなく早期退院を見込むことができるのです。

今後の展開

 現在、COVID-19のコロナ禍で医療機関がひっ迫していることから、病床をより多く確保することが重要であるのは言うまでもありません。そのような状況下でこそ、同製品を使用することで合併症のリスクを軽減し、入院期間を短縮することは医療機関にとっても、患者にとっても大きなメリットがあります
サウサンプトン大学麻酔・救命救急医学教授であるMike Grocott氏は、次のように述べています。「効果的なプレリハビリテーションは、合併症を減らし、QOL(生活の質)を向上させることが分かっています。医療サービスがCovid-19の大流行から回復するにつれ、患者さんを術前にサポートし最適化することがこれまで以上に重要になり、より良い転帰、合併症の減少、入院期間の短縮、手術経路の効率化につながります」

手術前後の患者に着目し、患者の状態だけでなく医療機関にとっても有益なメリットをもたらす同製品の今後に引き続き注目していきましょう。


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