Hinge Health-世界で最も患者中心のデジタルMSKクリニック

Hinge Health Inc. とは

 Hinge Health Inc. (以下、Hinge Health) は、2015年に設立されたデジタルヘルスケア企業で、慢性腰痛や関節痛を含むMSK (筋骨格系)疼痛療法プログラムを個人及び企業向けに販売しています。同プログラムの提供により、慢性疼痛の治療及び予防はもとより、鎮痛薬であるオピオイドの使用量を減らしたり通院の必要性をなくしたりすることまで期待できます。

現在数百万人の会員を持つHinge Healthは、航空宇宙会社のBOEINGや大手ITのSalesforce、そして卸売り業者のUS foodsなどをはじめとして500以上の企業や医療保険制度への導入実績を持つなど、デジタルMSKソリューションを提供している企業としてはNo.1の実績を誇っています。

プログラム概要

引用元:https://www.hingehealth.com/hinge-health-raises-series-d/

 同プログラムは、健康状態の判断やアドバイスを行う医師をはじめとしてケアプランの作成や運動療法の指示を行う理学療法士、ケアプランの管理を行うヘルスコーチ、そして身体の動きを測定し記録するモーションセンサー技術の4つの要素が組み合わさることで成り立っています。また、PREVENTION(予防), Acute(急性), Chronic(慢性), Surgery(手術)という患者の状態を4つに分類したプログラムが設けられています。以下、それぞれについてみてみましょう。

PREVENTION(予防)

PREVEMTION(予防)プログラムは怪我を予防するためのもので、医師と理学療法士によって設計されたものとして、健康を維持するためにいついかなる時でも各患者にパーソナライズされたエクササイズや教育コンテンツを提供します。

ACUTE(急性)

ACUTE(急性)プログラムはねん挫などの急性の痛みに対するもので、筋肉痛や関節痛問わず対応しています。怪我や症状に関する簡易的な質問に答えると、患者の状態に合わせて理学療法士がマッチングされ、ビデオ通話を通じた運動療法を行うことで疼痛の緩和をしていきます。

CHRONIC(慢性)

CHRONIC(慢性)プログラムは慢性的な痛みに対応しており、ウェアラブルデバイスを使用することで日々の生活における動きやライフスタイルの改善を支援します。理学療法士によって作成された、運動療法を含むヘルスケアプランをヘルスコーチの監督のもと継続的に行うことで慢性的な痛みを緩和していきます。

SURGERY(手術)

SURGERY(手術)プログラムは手術するべきか否かという判断に迫られたとき、整形外科医につなげることで適格なアドバイスを提供します。それでもなお手術を受けたほうが良いと判断された場合には、プレリハビリテーションという手術前に体調を万全にしておくプログラムを実施します。

電気刺激ソリューション『Enso』

引用元:https://medcitynews.com/2021/03/hinge-health-makes-first-acquisition/


 Hinge Healthは上記で述べたプログラムとは別に疼痛を治療するソリューションも提供しています。『Enso』と呼ばれるウェアラブルデバイスは、薬や手術をすることなく電気的な神経刺激を送ることで筋骨格系の疼痛に対処する最先端のウェアラブルテクノロジーです。これまでの非侵襲的な電気刺激では、低周波のインパルスを送ることで対処していましたが、痛みの緩和は限られていました。一方で高周波パルス装置は、より即時的かつ長期的な痛みを緩和しますが、外科的移植を必要としました。

こうしたメリット・デメリットが挙げられる中、双方の良いとこ取りをしたのがまさにEnsoで、同製品は非侵襲的なウェアラブルデバイスとして外科的手術を必要とせずとも高周波成分を含む電気インパルスを供給することができ、大幅な痛みの緩和を可能としています。現在Ensoは、米国国防総省や労働者災害補償、米国退役軍人省のなど計7,000人以上の人々に使用されています。

臨床試験による医学的効果の実証について

 2020年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)とスタンフォード大学の研究者によって実施された1万人以上を対象としたコホート研究で、Hinge Healthを使用した被験者の平均69%が痛みの軽減を経験し58%がうつと不安の軽減を経験したという報告があがっています。またUS Foodsが実施した医療費請求調査では、Hinge Healthを利用していないMSK患者の手術費が30%増加した一方でHinge Healthを利用したMSK患者の手術費は56%減少したことが明らかになりました。

今後の展開

 現在アメリカでは成人の2人に1人以上がMSK疾患を患っており、アメリカのヘルスケア市場の全支出のうち6分の1をMSK疾患が占めているなど、最大のコスト要因の一つとなっています。さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う在宅勤務への移行がこの問題を深刻化させており、70%の従業員がリモートワークへの移行後、MSKの痛みが悪化したか、もしくは新たな痛みを経験したということが報告されています。

このような状況下において、ウェアラブルテクノロジーと各種専門家を組み合わせて疼痛を緩和するHinge Healthがいかに重要な存在であることが分かります。同社はこれまで総額8億ドルもの資金調達に成功しており、今後さらにソリューションの拡充が期待されます。アメリカで大きな問題となっているMSK疾患を解決する最大の一手を繰り出すリーディングカンパニーとなるのか、今後の動向に目が離せません。


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