物質使用障害(SUD)を治療するPDT『reSET』

『reSET』とは

 reSETは、米Pear Therapeutics社が開発したDTxで、アルコールや覚せい剤、大麻などに依存する精神疾患 、『物質使用障害(SUD)』を患っている人々を対象としています。DTxの中でも厳しい基準をクリアした処方箋型デジタル治療アプリ(PDT)※として、FDAからの認証を受けています。

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仕組み

 同製品は臨床医のもとで外来治療を受けている18歳以上の患者を対象としており、12週間にわたってCRA(コミュニティ強化アプローチ)と呼ばれる認知行動療法に基づいた治療を行うことで、従来の治療の補佐的な役割を果たしています。アルコールやドラッグといった物質使用は、その行動に対する報酬が得られるからこそ中毒性があるのですが、CRAはそれを逆手にとったもので、物質使用よりも報酬の大きなライフスタイルを発見することを目指しています。

具体的には、まず日々の生活の中でアルコールやドラッグを摂取したいという欲求やそれを誘因するもの、そして実際に摂取した際の状況について記録を取ります。こうすることで普段自分がどのような状況下でどのくらいの物質を摂取しているかを客観的に把握することができます。(=認知) 次に日々提示されるレッスンや各種クイズを通して物質使用に関する知識を付け、行動変容を促します。これを日々繰り返すことで物質使用の治療を行います。

引用元:https://peartherapeutics.com/products/reset-reset-o/

※PDT(Prescription Digital Therapeutics)…DTxの中でもRCT(無作為化比較試験)で安全性と有効性を検証しなければならないなどの厳しい基準をクリアしており、かつ医者の処方を必要とするアプリケーションのことを指します。

reSETの優位性

医学的効果

 同製品は、FDAから医療機器として承認されており、医学的エビデンスに基づく医学的効果が実証されています。実際に外来治療にreSETを使用したところ、対照群に比べて介入群の断薬率が22%、治療継続率が13%それぞれ上回ったという報告がされています。

医師への情報共有

 reSETは臨床医や他の医療従事者向けが患者の治療や進捗状況を把握するためのダッシュボードを提供しています。ダッシュボードには、完了したレッスン、患者が報告した薬物使用、患者が報告した欲求や誘因、コンプライアンス報酬、尿薬物検査結果などの診療所内でのデータ入力など、患者のreSETの使用に関する情報が表示されます。

アクセシビリティの高さ

 reSETは24時間いつでも、どこでもアクセスすることが可能となっています。従来の来院型のみの治療では、病院に来院した時でしか医師が患者の行動に介入することはできませんでしたが、同製品を使うことで時間場所関係なく治療をすることができます

reSETを使用するにあたっての注意点

 reSETはあくまで臨床医師の補佐的な役割をなしており製品単体で治療に用いることはありません。臨床医による診察と併用する形で使用することが求められており、患者はスマートフォンやタブレットで同製品を使いながら外来診療も受けなければなりません。

まとめ

 アルコールや薬物の摂取によって健康被害を引き起こすSUDですが、自殺の重要な因子の一つとなっており、うつ病に次いで自殺の原因となる精神疾患として知られています。薬物の使用が多い海外ではもとより、日本国内でも一定数の患者が存在し、SUDを患うことによって引き起こされる健康的被害や失職や逮捕、離縁などの間接的な機序は計り知れません。同製品はそういった様々な障害を引き起こすSUDの治療を補助することを目的としています。今後の動向に目が離せません。


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