慢性不眠症を治療するDTx『Somryst』

『Somryst』とは

 Somrystは米Pear Therapeutics社が慢性不眠症を患っている人々を対象に開発したDTxで、中でも厳しい基準をクリアした処方箋型デジタル治療アプリ(PDT)※として、FDAからの認証を受けています。22歳以上の患者を対象としており、9週間にわたって神経行動学的介入(不眠症の認知行動療法-CBT-I)を行うことで不眠症の改善をサポートしています。

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特に同製品は睡眠制限及び統合、刺激制御、認知的再構築など、CBT-Iの概念に焦点を当てた6つの治療項目で構成されており、それに対して患者は一週間に一つの頻度ですべての項目を完了させる必要があります。

引用元:https://peartherapeutics.com/products/somryst/

※PDT(Prescription Digital Therapeutics)…DTxの中でもRCT(無作為化比較試験)で安全性と有効性を検証しなければならないなどの厳しい基準をクリアしており、かつ医者の処方を必要とするアプリケーションのことを指します。

Somrystの優位性

医学的効果

 同製品は、FDAから医療機器として承認されており、医学的エビデンスに基づく医学的効果が実証されています。実際に臨床試験において、同製品を使用した患者は入眠にかかる時間が 45% 減少、夜間に目が覚める時間が 52% 減少、不眠症状の重症度が 45% 減少したといいます。

医師との情報共有

 Somrystは、医療従事者が患者の治療や進捗状況を把握するための臨床医向けダッシュボードも提供しています。臨床医ダッシュボードには、不眠症重症度指数(ISI)、患者健康調査票8(PHQ-8)2スコア、毎晩の睡眠日誌から得られる睡眠指標など、患者のSomryst使用に関する情報が表示されます。

Somrystを使用するにあたっての注意点

持病との兼ね合い

 同製品では睡眠制限を行うため、睡眠制限を行うことによって悪化する可能性がある持病を抱えている患者は同製品の使用を制限される可能性があります。具体的な例としては、睡眠時無呼吸症候群やてんかん、双極性障害、統合失調症、精神病スペクトラム障害などが挙げられます。

眠気

 同製品の使用初期には眠気を引き起こす可能性があり、仕事や日常生活で重大な事故を避けるために注意力や慎重さが必要な場合は同製品の使用を制限される可能性があります。具体的な例としては長距離トラックの運転手や航空管制官、重機オペレーターなどが挙げられます。

今後の展開

 入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒などの症状がみられる不眠症ですが、その中でも1か月以上症状が続く慢性不眠症は日常生活に大きな支障をきたします。ここまで説明してきたSomrystはこのような慢性不眠症に対して医学的エビデンスに基づいた医学的効果があるというのですから恩恵を受ける患者は少なくないはずです。

日本では多くの人々が不眠症を患っている中、未だにSomrystのような非薬物療法のDTxに対する認証が進んでいません。今後このようなサービスが展開されれば日本で不眠症に悩んでいる多くの患者が救われることは間違いありません。今後の動向に注目しましょう。


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