Digital Therapeutics Alliance (DTA)

Digital Therapeutics Allianceとは

 Digital Therapeutics Alliance(以下、DTA)とは、2017年に設立された非営利団体で、DTx業界のリーディングカンパニーや業界を取り巻くステークホルダーによって組織されました。同団体はDTxの推進を通して世界のヘルスケアを変革することをビジョンとして掲げており、医療業界に関わる全てのステークホルダーが恩恵を受けられるよう活動しています。

活動内容

 DTAは、DTx企業や非営利団体、医療機器メーカー、製薬会社、そして医療研究機関など医療業界に関わる多方面からの企業及び団体を会員として組織しており、患者や臨床医に対する教育を通したDTxの使用促進、そして政策立案者に対する提言を通したDTxの普及を行い、DTxが医療・ヘルスケア業界に大きな地位を築くための活動を行っています。特に2019年にはDTAリソースパートナープログラムを立ち上げ、商業化及び製品開発のネットワークを構築することによってDTxの開発から上市後までの支援を行っています。

同団体は実際に、DTxの概念を普及させるべく既に上市しているDTx製品の一部を掲載したり、各国のDTx進捗状況についてレポートをまとめたりしています。それぞれについて見てみましょう。

Product Library

 DTAは主要なステークホルダーがDTxを理解し、幾戦ある他のモバイルヘルスアプリと差別化できるようDTx製品の一部をピックアップし、一覧形式で掲載しています。この記事では掲載されているDTx製品のうちの一部製品をご紹介します。

Blue Star

世界初のDTxで、Ⅰ型及びⅡ型糖尿病患者向けに開発されました。糖尿病患者の血糖値や血圧、服薬状況、そして食事や運動の管理を行い血糖値の低減及び健康全般の改善行います。

EndeavorRX

 ビデオゲームをベースとした世界初のDTxで、8歳~12歳のADHD患者を対象としています。ゲーム内のタスクの遂行を通して注意や作業記憶を司る前頭葉を刺激し、治療を行います。

Daylight

 18歳以上の成人を対象とした非処方箋型のDTxで、心配や不安の改善、及び全般性不安障害(GAD)の管理を行います。認知行動療法(CBT)に基づいたプログラムの実行により、患者が抱える心配や不安を軽減します。

Kaia Health

 18歳以上のMSK(筋骨格)疾患患者を対象としたDTxで、疼痛管理のゴールドスタンダードとして知られるMMRを実装し、AIによるパーソナライズされた治療を行います。

Kaiku Health

 がん患者のQOLを向上させることを目的としたDTxで、治療と治療の間や治療後の症状をデジタルプラットフォームで管理します。

leva

 専用の器具を用いて女性が骨盤底筋(主に排泄の維持に関与する筋肉)を鍛えることをサポートし、尿失禁の治療を行います。

Nervio

 12歳以上の片頭痛患者を対象とした遠隔電気神経調節(REN)刺激装置で、スマートフォン上のアプリケーションと連携し片頭痛発生時に電気刺激を送ることで片頭痛の緩和を行います。

Propeller

 喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者を対象としたDTxで、付属品である吸入器に付いているセンサーを通して患者の服薬状況を管理し、個別最適化された症状コントロールを行います。

reSET

 アルコールや覚せい剤、大麻などに依存する精神疾患、“物質使用障害(SUD)”を患う患者向けに開発されたDTxで、12週間にわたって認知行動療法の一種であるCRAに基づく治療を行います。

reSET-O

 オピオイドの使用に依存してしまうオピオイド使用障害(OUD)患者を対象としたDTxで、12週間にわたって経口ブプレノルフィンを用いた治療を行い、来院定着率を高めます。

Sleepio

 不眠症を抱える患者向けに開発されたDTxで、認知行動療法(CBT)に基づいた非薬物療法によって不眠症を治療します。

Somryst

 22歳以上の慢性不眠症患者を対象としたDTxで、9週間にわたって神経行動学的介入を行うことで不眠症改善のサポートを行います。

上記で紹介したDTx製品はあくまで一部であり、DTAは他にも数々のDTx製品を紹介しています。詳しくはこちらをご覧ください。

各国のDTx状況についてのレポート

出典:https://dtxalliance.org/understanding-dtx/dtx-by-country/

 DTAは各国のDTx進捗状況について、規制情報などの観点から分析し、レポートとしてまとめあげています。レポートには、DTxの定義や患者ケアにおけるDTxの価値、DTx介入の種類、DTxの安全性と有効性、そして各国における規制と製品入手経路についての情報が含まれています。特にこのレポートは、政策立案者やDTxメーカーが、特定の国におけるDTx製品の認知、規制、資金調達の現状を理解し、各国の管轄区域における共通点と相違点を明らかにし、克服すべき潜在的な障害を判断し、そして臨床的に検証された治療法を患者が適切に入手できるような戦略的アプローチを推進するのに役立ちます。

今後の展開

 現在、DTAの会員数は設立年初から50%以上増加しており、DTx企業、医療機器企業、非営利団体、研究機関、製薬メーカーなど、ますます多様化し、DTx製品導入促進への投資が高まっています。

DTAリソースパートナープログラムの最初のパートナーとして選ばれたEVERSANA社のCEOであるJim Lang氏は次のように述べています。「デジタル・セラピューティクスは、ヘルスケアの概念を変えつつありますが、その進化を理解し、高く評価している人はほとんどいません。私たちは、これらの革新的な製品の上市と商業化に向けて、画期的で変革的なアプローチをとることを約束します。これこそがこの業界に必要なことであり、さらに重要なことは、患者さんにふさわしいことです」

まだまだ成長段階にあるDTxが既存の医療・ヘルスケア市場で今後どのような地位を築き上げるのか、DTxを推進するべく精力的に活動しているDTAの動向に注目です。


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